銀行員の財務諸表を見るポイントとは?
本日は、銀行員は財務諸表のどこを見ているのか?について話したいと思います。
といっても基本的な事項だと思いますので、「そんなの知ってるよ!」という内容が多いかと思います。
貸借対照表(BS)のポイント
まずは、BSから。
ちなみに、貸借対照表を「BS」、損益計算書を「PL」と呼びます。
銀行員と話すときは、「BS」や「PL」という言葉を使いましょう。
「おっ、この社長できるな」と思わせることができます。
「そんなことで!?」と思うかもしれませんが、意外とそんなものです。
BSのポイントは「資産性」
BSを見る際に重要なのは、「資産性」です。
つまり、決算書上の数字である「簿価」で判断するのではなく、「実態」を見ているのです。
その際に参考にしている資料は、「勘定科目内訳明細書」です。(「科目明細」とか「内訳書」などと呼ばれていますが、ここでは「内訳書」と呼びます。)
内訳書は、税理士事務所でも手を抜いている!?ところがあるくらいなので、経営者からしてみれば、「そんなのあったっけ?」みたいな資料かもしれませんね。
ちなみに、当事務所は内訳書の重要性を認識しているので、手を抜くようなことはしていません(笑)
ところが、銀行員はこの内訳書を「穴の空くほど」見ています。
たとえば売掛金であれば、内訳書の得意先に回収懸念はないか?等を細かくチェックし、怪しいものは資産からはじいていきます。
また、土地なども時価を把握し、帳簿価額とのズレを認識します。
そうして得た実態のBS(銀行員は、よく「実バラ」と呼ぶそうです。)をもって、その会社の格付けを判断しているのです。
ちなみに土地の含み損などは、会社が黒字のときは目をつぶってもらえますが、赤字に転落したとたん、下落した時価で判断されるようです。
融資審査のポイントは「資金使途」
銀行員が融資審査を行うにあたってまず最初に行うことは、「資金使途を捕まえること」です。
つまり、「融資をしたお金がいったい何に使われるのか?」ということです。
資金使途を捕まえるポイントは、「見合い資産」です。
「見合い資産」というのは、「借入金がどの資産に化けているのか?」ということです。
たとえば、売掛金、在庫、買掛金から算出した正常な運転資金が7千万円だとして、借入金が1億円あったとします。
すると、残りの3千万円はどこにいったのか?を探す必要がありますよね。
ここで、現預金に3千万円があれば、ちょうどこれと「見合っている」ことになります。
ところが、もし現預金がほとんどなく、代わりに投資有価証券が3千万円あったらどうでしょうか?
「借りたお金で投資してんじゃねーよ!」と銀行員は思っているはずです。
この「見合い資産」という目線は、とても重要です。
自分の会社の借入金が、どの資産と「見合っているのか」を分析してみると良いでしょう。BS(貸借対照表)を見る力が少し上がると思います。
損益計算書(PL)のポイント
続いて、PLの見方についてです。
PLとは、損益計算書のことです。
PLには、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前利益、税引後利益の5つの利益があります。
銀行員はどの利益も重視する
さて、この中で銀行員が最も重視する利益はどれでしょうか?
答えは、「全て」です。
どれも重視しているのです。
その中でも重要なものをしいて挙げるのであれば、個人的には営業利益→経常利益の順番です。
ちなみに、経営者も営業利益や経常利益を重視している方は多いです。
さらに、自分たちが重視している利益だからこそ、「銀行員も営業利益や経常利益をきっと重視しているだろう」と考えている方も多いでしょう。
銀行員はわずかな利益を疑って見ている
このような経営者の思惑もあり、ある不思議なPLが量産されることとなります。
それは、「営業利益(経常利益)は大きな黒字だが、なぜか税引前利益(もちろん税引後利益も)はわずかな黒字」というPLです。
なぜこのようなPLが出来上がってしまうかというと、経営者の頭の中で次のように考えられているからです。
「銀行には良い所を見せたい!でも税金を払うのは嫌だ!」
その結果が、上の気持ち悪いPLなのです。
銀行が重視する(と思われている)営業利益(経常利益)はしっかりと黒字を確保し、税金は払いたくないので、税引前利益は雀の涙ほど。
売上が10億円の会社なのに、なぜか税引前利益がたったの10万円!?みたいなPLを見たすべての銀行員は、心の中でこう思っています。
「んなわけねーだろ!」
ただし、銀行員も経営者に面と向かっては言えないので、「下から積み上げたような決算書ですね。」と微笑みながら言ってくれます。
これは、決して褒められているわけではなく、軽くディスられています。
科目の表示は適切な場所へ
もちろん、役員退職金や大規模修繕といった、当然に特別損失となるような費用が多額に発生した年には、営業利益(経常利益)は大きなプラスでも、税引前利益はちょいプラス(もしくはマイナス)といったことはあり得ます。
銀行員もその辺は理解しているので大丈夫です。
ちなみに、役員退職金を平然と販管費に突っ込んで、営業利益をマイナスにしている決算書をときどき見かけますが、センスがありません。
しっかりと特別損失に計上しておきましょう。
ちなみに、減価償却費を計上せずに黒字にしている決算書も、ときどき見かけます。
例外は、繰越欠損金を抱えているため、あえて減価償却費を計上せずに利益を出し、相殺させる場合ぐらいです。
銀行員はそのような黒字を全く評価しませんので、お気をつけください。
本日のまとめ
いかがだったでしょうか?
銀行員は、私のような税理士よりもはるかに多くの財務諸表を見てきています。
言わば、「財務諸表を見るプロ」です。
小手先のごまかしなどはすぐに見破られてしまいますが、銀行員の目線を知ることはとても重要です。