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銀行に決算報告するときの注意点

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2021.12.22

ひと昔前、銀行への税理士の同行は、銀行から嫌がられていました。

しかし現在は、事業性評価融資などの流れから、税理士の同行はむしろ歓迎されているようです。

もちろん、「正しい振る舞い」をしてこそですが・・・

同行する税理士のNGな行為は、逆効果になることもあるからです。

さて、本日は「銀行に決算報告するときの注意点」について話したいと思います。

銀行への理想的な決算書の渡し方とは?

ちなみに、銀行の決算書の預かり方は、大きく以下の3パターンがあります。

①銀行が企業に出向いてくれる
②企業が銀行に出向く
③郵送でもらう

これは、その企業に対する銀行の評価の順番に並んでいます。

ざっくり言うと、①は優良企業、②はそこそこの企業、③はアレ!?な企業、という感じです。

③になると、「もはや時間もかけてられないし、数字だけもらえればそれでいい」という、見事な塩対応ぶりになります。

では、企業側で決算書を渡す方法を選択できるとしたら、どの方法を採用すべきでしょうか?

答えは②です。

企業の方から銀行に出向いた場合、銀行担当者のほとんどは、上司に同席してもらいます。
課長などの場合もあれば、支店長の場合もあるでしょう。

じつは、これが大切なのです。

ここで、しっかりと存在を認識してもらうことが重要です。

実際の融資の局面においては、担当者が書いた稟議書を上司がチェックします。

このとき、全く顔も名前も知らない経営者よりも、「この間、決算報告で来てくれた社長さんだな」と認識してもらえた経営者の方が、融資において何らかのアドバンテージはあるはずです。

決算報告は、「事業内容を報告する機会」ではありますが、「自分の顔を売るチャンス」でもあるのです。

決算報告のポイントは「銀行員の思考回路に合わせる」こと

前置きが少々長くなりましたが、ここからは「決算報告の中身」について触れていきたいと思います。

中身に入る前に、まずは面談の時間から。

銀行員は基本的に忙しいので、なるべく長時間の面談は避けましょう。

目安としては、30分~1時間程度。

正直、1時間でもちょっと長いかもしれません。

次に、自社の経営状況の伝え方ですが、ポイントは「銀行員の思考回路に合わせる」ことです。

「思考回路って・・・?」と思われた方も多いかもしれませんが、自社の経営状況を、「過去→現在→未来」という時系列で話すようにするのです。

なぜなら、銀行員は、時系列でその企業の経営状況を把握する癖がついているからです。

それぞれの時系列ごとにポイントを見ていきましょう。

時系列ごとのポイント ~過去~

まずは、「過去」です。

これは、まさに前期の決算のことです。

数字の説明については、すべての科目について満遍なく説明する必要はありません。

そもそも、銀行員は決算書の数字を見るプロなのですから。

ここでは、前々期と前期の比較をして、特に変化があった部分を中心に説明をすると良いでしょう。

時系列ごとのポイント ~現在~

次に、「現在」です。

これは、当期の足元の状況のことです。

決算報告は、期末から2、3ヶ月経過してから行われるので、当期はすでに2、3ヶ月は経過しているはずです。

こちらも、ただ現在の状況を説明するのではなく、ちょっとしたコツがあります。

それは、「過去の決算状況を踏まえて、どのような改善策を試みているか」をアピールすることです。

時系列ごとのポイント ~未来~

最後に、「未来」です。

これは、当期の着地見込みのことです。

「着地見込みと言ったって、そんなの分からないよ!」と思う方もいるでしょう。

でも心配しないでください。

大切なのは、「社長が今期の着地をどのように見込んでいるか」を伝えるだけでいいのです。

当期の着地見込みについては、できれば月々のP/L計画を展開することが望ましいでしょう。

決算報告は必ず書面にまとめよう

以上のような順番で決算報告を行うのですが、大切なことをもう1点。

これらをすべて口頭で行うのは、あまりお勧めしません。

それは、銀行員は「すぐ忘れるから」です。

決して銀行員をディスっているわけではありません。

銀行営業マン1人あたりの担当社数は、もちろん銀行にもよりますが、70~100社くらいと言われています。

しかも、1日に何社も訪問することもありますので、1社ごとの内容を記憶できるわけがありません。

したがって、なるべく書面に落として説明するのです。

ただし、書類の枚数は極力減らし、簡潔にまとめることを心がけましょう。

銀行員が決算報告の際に本当に知りたいこととは?

さて、じつは決算報告はこれだけではありません。

たしかに銀行員は、「今回の決算はこんな感じで、当期はこんな風に推移する見込みなんだな。」と思うでしょうが、銀行員が本当に知りたいことは他にあるのです。

銀行には「資金調達計画」をきちんと伝えよう

銀行も、他の一般的な企業と同じく利益を追求しています。

銀行にとっての利益の源となるのは、もちろん「融資」です。

銀行は、融資先の審査はもちろん慎重に行うものの、基本的には「お金を貸したがっている」のです。

さて、お金を貸したがっている銀行に対して、どんな情報を提供すれば喜ばれるでしょうか?

それは、「資金調達計画」です。

つまり、いつ・どこから・いくらのお金を調達する予定なのかを、銀行は知りたがっているのです。

「資金調達計画」を示す表としては、できれば資金繰り表を作成することをお勧めします。

中小企業において、普段から資金繰り表を作成している会社はかなり少ないと言われていますが、その効果は絶大です。

決算報告の順番はメインバンクから

最後に、決算報告を行う銀行の順番についてもお話ししておきます。

決算報告は、必ずメインバンクから行いましょう。

「どこからでもいいのでは?」と思う方もいるかもしれませんね。

しかし、メインバンク以外に決算報告を行った際、資金需要を伝えると、必ずといっていいほどメインバンクの意向を聞かれます。

そこで、メインバンクから引き続きの支援がある旨を伝えると、「メインバンクが貸すならウチも貸そう」となるのです。

本日のまとめ

いかがだったでしょうか?

決算報告は、単に決算書を銀行に渡すだけではないのです。

決算報告の場で何を伝えるかによって、その後の銀行との関係性が大きく変わるのです。

当事務所では、資金繰り表の作成はもちろん、決算報告の際にはオリジナルシートを作成して銀行に説明しています。

資金調達や資金繰りにお困りの際には、お気軽にご相談ください。

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