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財産が自宅ぐらいしかなくても信託をすべき理由とは?

ブログ

2021.12.03

私の祖母は、亡くなる数年前からおそらく認知症でした。

しかし、家族信託はもちろん、後見制度を利用することはありませんでした。

それは、大きな財産がなかったからです。

家族信託の説明をしていると、「うちは財産なんてないので、信託は必要ないです。」といった考えをお持ちの方がいらっしゃいます。

しかし、そういった方々に実際の資産内容をお伺いすると、自宅不動産と預貯金はお持ちであるケースが非常に多いです。

では、財産が自宅不動産と預貯金のみである方は、信託する必要はないのでしょうか?

今日はそんなお話です。

認知症対策をしないことのリスク

預貯金と自宅不動産をお持ちの方が、何も対策をせずに認知症になってしまったら、どんなことが起こるでしょうか?

例えば、銀行から預金を引き出したい、介護費等のために自宅不動産を売却したい、となったときは、後見制度を利用しなければならなくなります。

後見制度を利用するデメリットについては、また別の機会にお話ししたいと思います。

対策をしないことのリスクについて、もう少し詳しく見てみましょう。

リスク① 自宅が空き家になっても売却できない

近年は、都市部だけでなく田舎の方でも、ご高齢の方のみで生活する割合が増えています。

持ち家に住んでいる方が介護施設に入居することとなった場合、家は空き家になってしまいますよね。

介護施設に入居すると介護費用も必要となるため、自宅に戻る見込みがない場合には、自宅を売却しようと考えるご家族も多くいらっしゃいます。

空き家になると、放火や空き巣などの犯罪被害にあうリスクが高まり、また、建物や庭の手入れが必要になる等、ご本人やご家族に肉体的・金銭的負担が発生します。

介護施設に入居すると介護費用も必要となるため、自宅に戻る見込みがない場合には、自宅を売却しようと考えるご家族も多くいらっしゃいます。

そのような場合に、所有者が認知症などの理由で、判断能力(契約能力)が無い状態であれば、自宅を売りたくとも売却することが難しくなります。

リスク② 所有者の判断能力の低下が進み、自宅不動産を売り急ぐ必要が生じる

①でお伝えしたように、介護施設に入居したことをきっかけに不動産を売却しようとするケースは少なくないですが、自宅不動産を売却することを決めてから、実際に買主が見つかり、不動産を売却できるまで、通常、数か月を要するのが一般的です。

この間に、もし売主様の判断能力が低下してしまったらどうでしょうか?

不動産の売却にはご本人の判断能力(契約能力)が必要ですから、たとえ自宅を売却しようと思った時点では認知症を発症していなくとも、売却活動中に売主様の判断能力がどんどん低下していった場合、価格を下げてでも不動産を売り急がなければならなくなるのです。

リスク③ 売却した後の金銭が引き出しにくくなる

不動産を売却したら、売買代金は売主様の口座に入金されます。

売主様が不動産売却の時点でお元気でも、その後、認知症を発症し、ご自身で口座の管理ができなくなった場合、売買代金を銀行から引き出すことが困難になってしまいます。

リスク④ 自宅の遺産分割ができない

例えば、子どもがいる夫婦が自宅不動産を所有しており、夫が自宅不動産の名義人になっている場合、夫が亡くなれば、その不動産は妻と子が相続することとなります。

遺言書や家族信託などの相続対策を行っていない場合には、法定相続分で相続するか、妻と子の間の遺産分割協議を行う必要があります。

遺産分割を行うのにも判断能力が必要となるため、妻が高齢で認知症を発症しているような場合には、遺産分割協議自体を行うことが難しい場合があります。

認知症リスクを回避する家族信託とは!?

このように、自宅不動産をお持ちの方が認知症となった場合に起こりうるリスクとして、以下の4つを挙げました。

①自宅が空き家になっても売却できないリスク
②所有者の判断能力の低下が進み、自宅不動産を売り急ぐ必要が生じるリスク
③売却した後の金銭が引き出しにくくなるリスク
④自宅の遺産分割ができないリスク

以上のようなリスクを回避する方法として、家族信託はとても有効です。

①②は自宅の売却時についての問題ですが、家族信託を行っておけば受託者が売主となる
ため、問題は生じなくなります。

③は、自宅を売却して売却代金を手にした後の話ですが、これも家族信託を行っておけば、受託者名義の信託口口座に入金されるため、問題は生じなくなります。

最後に④ですが、こちらも家族信託を活用しておけば、委託者(財産の元の所有者)の死亡時に誰が財産を受け取るかを決定しておくことができるため、そもそも遺産分割協議が必要な事態を避けることができます。(④の問題の対策としては、遺言を作成する方法も有効です。)

後見制度にもデメリットがたくさん!?

逆に、何ら対策をしていなかった場合、①~④の問題をクリアするためには後見制度を利用する必要があります。

しかし、後見制度には利用者にとって不利益と考えられる要素が多数存在します。

例えば、一定以上の現預金(おおよそ1000万程度)を有している方が後見制度を利用する場合、家庭裁判所は基本的に弁護士・司法書士を後見人として選任する運用をしています。

親族や本人の目線からすると、突然現れた第三者に本人の預金通帳、不動産の権利証をはじめとする財産関連の重要書類をすべて預け、かつ、財産の利用についてその第三者の指示に従わなければならないとすれば、非常に大きな負担となるでしょう。

また、弁護士・司法書士が後見人となった場合には、後見人に対して報酬も支払わなければならないため(月に2万~6万円程度)、金銭的な負担も増加してしまいます。

ある程度費用をかけても、このような後見制度を利用しなければならない状況に陥らないための対策をしておく価値は、十分あると考えられます。

本日のまとめ

いかがだったでしょうか?

このように、「自分には資産がないから対策は必要ない」と思われる方でも、認知症・相続対策を行わないと、上記①~④の事態の発生、さらに、後見制度を利用しなければならない状況に陥ってしまう可能性、といったリスクがあります。

当事務所では、家族信託に関するさまざまなサービスを提供しています。

無料相談も行っておりますので、認知症対策も含めて将来の相続対策をお考えの方は、お気軽にお問合せください。

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