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親族間のお金の貸し借り、そのやり方だと贈与になりますよ!

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2022.09.12

親と子、祖父母と孫など、親族間でお金の貸し借りを行うことってよくありますよね。

身内ということもあり、返済や利払いの取り決めをしないケースも多いと思います。

ただし、親は子どもにお金を貸したつもりでいても、貸し借りの事実を主張する要件を満たしていないと、税務署から「贈与」と認定される危険もあるのです。

本日は、そんなお話です。

親族間のお金の貸し借りは贈与と認定されやすい

贈与と認定されてしまうことのリスク

まず、めでたく!?「贈与」と認定されてしまうとどうなるかですが、もちろん、贈与税が発生します。

年間の贈与額が110万円以下であれば贈与税はかからないのですが、贈与税というのは、贈与額が高額であればあるほど税率が高くなる累進課税となっており、最大で55%に達します。

つまり、借りたとされる金額のほぼ半分を、贈与税として納めなければならなくなる可能性もあるのです。

税務署は親族間のお金の貸し借りを認めていない

このように、「贈与」と認定されれば贈与税が発生するわけですが、親が子どもにお金を貸したとして、そもそも何故それが「贈与」と認定されてしまうのでしょうか?

ここには、税務署や裁判所の考え方と一般的な私たちの考え方に大きな違いがあるからなのです。

税務署や裁判所は、基本的に親族間の金銭貸借を認めていません。

この考え方を示す、過去の判例をいくつかご紹介しましょう。

判例では、親族間の金銭貸借は原則として贈与にあたると示されています。

子供に対する3430万円の貸付金が贈与に当たるとした2003年の津地方裁判所の判決によると、「親族間で財産的利益の付与がなされた場合には(中略)特別の事情が存在しない限り、贈与であると認めるのが相当である」としています。

同様の事案を取り扱った2011年の宮崎地裁判決でも、「貸与であることが明らかな場合でない限り、贈与があったものと認めるのが相当」と判示されました。

いずれの判決文を見ても、親族間の金銭の貸し借りは租税回避の手段としてされることが少なくないため、事実上の贈与として取り扱われています。

したがって、金銭の貸借だと主張するためには、当事者間で金銭消費貸借契約があったことを証明できるだけの、明確な証拠を提示する必要があるわけです。

金銭消費貸借契約があったことを証明するための要件とは?

さて、当事者間で金銭消費貸借契約があったことを証明するためには、少なくとも3つの要件を満たす必要があるでしょう。

要件① 金銭貸借があったと証明するための契約書を作成する

金銭の貸し借りに限りませんが、契約というのは、口頭であっても当事者間の合意さえあれば成立します。

しかし、第三者に契約の存在を主張するためには、やはり書面の証拠が必要となります。

事実、先ほど紹介した二つの判例では、いずれもお金の貸し借りに関する契約書が残されていなかったことが、金銭貸借ではなく贈与とみなされる判断材料となりました。

では、金銭貸借にはどのような書面が証拠として必要なのでしょうか?

契約書には、借主のみが署名捺印する「借用書」と、当事者双方が署名捺印する「金銭消費貸借契約書」の二種類があります。

いずれを選択しても証拠としての力に大きな差はないとされていますが、原則として2通作成し、貸し手・借り手の両者が手元に保管する金銭消費貸借契約書の方が、紛失などの間違いが起こりにくいとされています。

さらに、後づけで金銭消費貸借契約書を作成したと国税当局や裁判所に疑われないようにするため、作成時に公証役場で確定日付印を押してもらえば、文句なしです。

要件② 返済履歴を証明する

国税庁のタックスアンサーでは、「実質的に贈与であるにもかかわらず形式上貸借としている場合や『ある時払いの催促なし』または『出世払い』というような貸借の場合には、借入金そのものが贈与として取り扱われます」と説明しています。

つまり、一つ目の要件である契約書を作成して形式上の体裁を整えるだけでは不十分であり、実際に契約を履行している事実の証明が求められるのです。

返済方法としては、現金のやりとりでは証拠として残しにくいため、履歴が残る銀行振込で返済することをおススメします。

要件③ 利子を設定する

二つ目の要件までを満たして金銭消費貸借契約の事実を証明できたとしても、借入金が無利子ですと「利子に相当する金額の利益を受けたものとして、その利益相当額は、贈与として取り扱われる場合があります」(国税庁のタックスアンサー)との説明通り、利息部分を贈与と認定される可能性があります。

契約書の作成時には、借入金にかかる利子を忘れずに設定・記載し、利子を加えて返済することが望ましいでしょう。

なお、国税当局の通達には、夫婦間や親子間といった「特殊の関係がある者」の間で交わされた無利子の金銭貸借は「その利益を受ける金額が少額である場合(中略)には、強いてこの取扱をしなくても妨げないものとする」との記載があり、必ずしも利子を契約に含む必要はないとの見方もあります。

ただし、通達のいう「少額」が、どれほどの金額を指すのか、具体的な数字は示されていません。

無用なリスクを避けるためには、親族間の金銭貸借であっても利子を設定しておくに越したことはないでしょう。

本日のまとめ

いかがだったでしょうか?

親族間の金銭貸借を含む資金移動は、銀行預金などの履歴を調べれば簡単に証拠が見つかります。

親族間のお金の貸し借りが多額に上ると、当事者だけの問題にとどまらず、税務署から思わぬ税金を課される事態に陥りかねません。

良かれと思ってした貸し付けで税負担が発生しないよう、親族間の金銭の貸し借りは慎重に行う必要があります。

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