相続税と贈与税ってどっちが高い?
相続対策の一つとしてよく知られているのが、生前贈与です。
ただし、「贈与税って高いんじゃないの?」と思っている人も多いでしょう。
もともと、相続税を回避しようと生前贈与する人を封じ込めるために贈与税ができたので、
贈与税の方が高くて当たり前では!?と考えるのが自然かもしれません。
実際のところ、どうなのでしょうか?
本日は、そんなお話です。
「贈与税」についてのおさらい
「確定申告」と聞くと、多くの人は所得税をイメージするかと思います。
しかし、毎年3月15日に申告期限を迎えるものは、所得税だけではありません。
それは、「贈与税」です。
前年中に財産をもらった人は、翌年3月15日までに、その1年分のもらった財産の合計額を申告し、納税する必要があります。
毎年、お子様などに生前贈与をされている方もいらっしゃるでしょう。
財産をもらった人は必ず贈与税の申告をしなければならないかというと、そんなことはありません。
「110万円以内なら贈与税はかからないんでしょ?」ということは、割と多くの方が知っている話かと思います。
ただし、顧問税理士さんなどの勧めで111万円くらいの贈与を行い、あえて贈与税の申告をして1,000円くらいの税金を納めている方もいらっしゃるでしょう。
本日のテーマとは少しズレてくるので、「あえて111万円の贈与税の申告を行う意味」については、また別の機会に触れたいと思います。
ちなみに、私は「111万円の贈与税申告は意味がないと思う派」ですが。
相続税と贈与税の税率表を見比べてみよう
前置きが長くなりましたが、本題です。
「相続税と贈与税はどちらが高いか?」ですが、これからお話しするのは、あくまでも「考え方」についてのお話です。
ご存知の方も多いと思いますが、相続税は、同じ財産額であっても相続人の数や種類、財産の種類などによって、その税額は異なります。
したがって、「一律にこうだ!」という結論は出せないのですが、生前贈与と相続についての考え方を知ってもらえたらと思います。
さて、ここで問題です。
上の税率表を見比べて、贈与税と相続税の税率はどちらが高いでしょうか?
・・・贈与税ですよね。
たとえば、1,000万円という金額(基礎控除などの話は省きます)で見比べてみると、贈与税が30%なのに対して、相続税は10%しかかかりません。
もともと、「亡くなったときに財産を持っていたら相続税でもっていかれてしまうから、生きている間に誰かにあげてしまおう!」という行為を防ぐために贈与税ができたので、その趣旨から考えれば当然なのですが・・・
生前贈与をすると本当に損をするのか?
では、本当に生前贈与をすると損をするのでしょうか?
1億円の財産を持っている人が100万円の生前贈与をした場合
そこで、次の問題です。
1億円の財産を持っている人が100万円の生前贈与をした場合、相続税はいくら減るでしょうか?
税率表を見てみると、1億円の財産にかかる相続税率は30%なので、100万円の財産が減るということは、
100万円×30%=30万円
の相続税が減ることになります。
一方、100万円の生前贈与については、基礎控除額110万円以下になるので、贈与税額は0円です。
つまり、100万円の生前贈与をすると、30万円も得することができるのです。
贈与税は、1度に渡す金額が大きいほど高くなる税金なのですが、裏を返せば、小さな金額でコツコツ贈与をすることによって、安い税金(場合によっては0円)で財産を下の世代に承継させることができるのです。
贈与税を払ってでも生前贈与をすべき人とは?
さて、これで終わりでもいいのですが、もう少しだけ深堀りしてみます。
たしかに、100万円の生前贈与を繰り返していけば、無税で財産を承継できることは分かりました。
しかし、たとえば財産額が10億円もある人の場合、100万円の生前贈与をしていったとして、いったい何年ですべての財産を移し終えられるのでしょうか?
基礎控除額を考えなければ、なんと1000年です。
あまりにも悠長すぎますよね。
生前贈与というのは、基礎控除額110万円以下であれば税金がかからないというだけで、税金を払うのであれば、別に200万円でも300万円でも贈与をしたらいいわけです。
実際、財産額が1億円の人であれば、200万円の生前贈与をしたとしても、トータルの税金は安くなります。(計算してみてください)
本日のまとめ
いかがだったでしょうか?
上記の説明を聞いた人からすると、「じゃあ、一体いくらの生前贈与をすればいいの?」という話になりますよね。
ただし、生前贈与以外にもさまざまな相続税対策はありますので、それらを総合的に組み立てていく必要があります。
当事務所では、お客様の状況に合わせた相続税対策をご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。