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無申告が厳罰化される!?

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2023.05.03

本来納めるべき税額を納めなかったときに課されるペナルティには、大きく分けて「過少申告加算税」と「無申告加算税」の2種類があります。

前者は、申告はしたものの漏れがあったり税務処理にミスがあったりして、本来の税額に足りない場合が該当します。

対する後者は、そもそも申告自体がなされず税金も納められていないケースです。

本日は、後者である「無申告加算税」についてのお話です。

無申告加算税が課されないケースとは?

無申告加算税が課されるのは、いうまでもなく法定期限までに申告がなされなかったケースです。

ただし、必ず無申告加算税が課されるわけではなく、じつは例外も存在します。

国税庁ホームページでは、加算税が課されないケースとして「期限内申告をする意思があったとき」を例外として挙げ、具体的に以下のすべての条件を満たせばよいとしています。

①申告期限から1ヶ月以内に自主的に申告をしている
②申告は期限オーバーでも納税自体は納期限内にしている
③過去5年以内に、同じ事情で無申告加算税を免除されたことがない

以上の3条件を満たせば無申告加算税は免除されますが、②にあるように、そもそも期限内に納税を行っている必要があります。

さらに、申告自体も遅れが1ヶ月以内でなければなりません。

また、③の意味するところは、「期限後申告を見逃してもらえるのは5年に1度」ということです。

現行制度における無申告加算税のペナルティ

こうした事情に当てはまらず無申告加算税を課されてしまうと、実際にどれだけのペナルティを払うことになるのでしょうか?

現行制度では、

①税務調査の通知を受ける前に自主的に申告
②調査の通知後、更正を予知するまでに申告
③更正予知後の申告

によって税率が変わります。

ここでいう「更正」とは、国税当局側が申告の誤りを正すことです。

「更正の予知」とは、「更正の処分を受けるかも」と納税者が認識することです。

①であれば最も軽い一律5%が適用され、②であれば本来納付するべき税額のうち50万円までは10%、50万円超の部分は15%となります。

これが③になると、50万円以下で15%、50万円超は20%となります。

さらに無申告が意図的であったと証明されると、重加算税として40%の高税率が課されてしまいます。

このように、現行制度でも十分に厳しい罰が用意されているわけです。

しかし国税当局にしてみれば、提出された申告書をベースに事実との乖離や差異を指摘できる過少申告に比べて、無申告はそもそもベースとなる申告書がないため調査のきっかけを掴みづらいのです。

また、申告しなかったことが意図的であるかどうかも証明が難しく、当局にとって無申告は「やりづらい」ターゲットとなっているのが現状です。

無申告加算税のペナルティ強化

こうした実情を踏まえ、昨年12月に閣議決定された2023年度税制改正大綱では、「税に対する公平感を大きく損なうような事例が生じている」として、無申告に対する厳罰化が盛り込まれました。

新たなルールとしてまず、これまで50万円以下と50万円超の2区分だった税率に、「300万円超」という新区分が設けられました。

税率は、更正予知前と後でそれぞれ50万円超からプラス10%となります。

重加算税でなくとも最高税率が30%になります。

さらに、短期間に何度も無申告を繰り返す累犯へは、もう一つペナルティが上乗せされます。

前年度と前々年度にも無申告加算税や重加算税を課されていると、税率が10%加算されるのです。

つまり3年連続で無申告をすると、3年目には最高税率が40%、重加算税であれば50%にも達することになります。

本来納めるべきだった本税に加えて、4割~5割の追徴課税は非常に厳しいですよね。

無申告に対する罰則強化は、1年前の22年度税制改正にも盛り込まれていました。

国は「適正な記帳や申告が行われていない納税者については、真実の所得把握に係る税務当局の執行コストが多大」として、無申告があった年の経費については、後から申告をしたとしても、帳簿書類などにより費用が生じたことや、支出先の相手先が明らかで反面調査によって支出が確かめられる場合を除いては、原則として損金にできないこととしました。

当局は無申告について「申告納税制度の根幹を揺るがす」と強い口調で断じており、課税・徴収の両面からの取り締まり強化は今後も続いていくとみられます。

本日のまとめ

いかがだったでしょうか?

そもそも、悪意がなくても計算ミスや税務処理の誤りによって起きてしまう過少申告と異なり、無申告は申告書の提出自体を怠るというものです。

毎年の確定申告を欠かさない経営者にとってみれば縁のない話と思われがちですが、じつはそうとも言い切れません。

例えば、贈与のつもりがなかった財産の受け渡しに課税される「うっかり贈与」や、相続後の税務調査で家族さえ知らなかった遺産の存在を指摘されるケースでは、そのつもりがなくても無申告加算税の対象となり得るのです。

数年前、某お笑いコンビの一人が長年にわたる無申告が発覚して話題となりました。

そのような怠慢や悪意がなくても、無申告加算税は課されます。

無申告の罰則強化は、来年1月以降に法定期限が来る国税に適用されます。

最高税率が50%に達し、致命傷になりかねないほどペナルティが厳しくなりますので、万が一にも無申告とならないように気をつけましょう。

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