CONTENTS コンテンツ

法人事業概況説明書ってどこまで書けばいいの?

ブログ

2022.04.27

法人税の申告する際の添付資料として、「法人事業概況説明書」というものがあります。

よく見ると、けっこう細かいことまで記入する書式となっていますが、どこまで丁寧に記入する必要があるのでしょうか?

本日はそんなお話です。

情報が多いほど税務署にとってはありがたい!?

法人税の申告をする際、確定申告書の他にいくつかの添付書類の提出が必要です。

法人税法施行規則第35条に規定されていますが、

・貸借対照表及び損益計算書
・株主資本等変動計算書
・勘定科目内訳明細書
・法人事業概況説明書

が添付書類となっています。(合併などの特別なケースは省略しますね)

ここで、下の添付書類2つについては、よく質問を受けます。

例えば「勘定科目内訳明細書」であれば、

「内訳書にはどこまで記載すればいいですか?」
「内訳書の金額基準(50万円以上など)を守らずに提出するとどうなりますか?」

といった感じです。

「勘定科目内訳明細書」については、対「税務署」という側面もありますが、対「金融機関」という側面もあります(実はコチラの方が重要!?)ので、また別の機会にお話ししたいと思います。

さて、「法人事業概況説明書」の中身に入る前に、一つ質問です。

税務署に出す情報について、情報が多いものと少ないもの、どちらが税務調査に入られる(選定される)確率が高いでしょうか?

「そんなの情報が少ないものに決まってるじゃん!」と考えた方が多いかもしれません。

しかし答えは、「情報が多いもの」です。

「たくさんの情報を出した方が真面目にやっていると思ってくれて、税務調査に入られにくいのでは?」と考えてしまいがちです。

ところが逆なのです。

その理由は、大きく2つあります。

理由① 情報が多いと「ヒント」も多い

考えてみてください。

情報が多く記載されている申告書(内訳書等を含む)と、記載があまりない申告書があった場合、調査官はどちらを調査したいと考えるでしょうか?

もちろん、情報が多い申告書を選びます。

なぜなら、情報が多ければ税務調査がやりやすいからです。

「情報が少なくて実態が掴めないから、調査して明らかにしよう」という理由で調査をするわけではないのです。

情報が多いということは、それだけ税務調査で見るべき「ヒントが多い」ということです。

すると、ある程度目星をつけておいてから調査に向かうことができるのです。

理由② 情報が多いと相手方と数字が合わなくなる可能性が高い

また、もう一つの理由があります。

それは、「相手方と数字が合わない可能性が高い」ことです。

こちらは正しい売掛金の残高を記載して提出したとします。

一方で、取引先が間違った買掛金の金額を提出していたとすると、どちらかが間違っているわけですから、税務署からすると、どちらかに税務調査に入る誘因となります。

まとめ

というわけで、税務署に提出する書類についての原則的な考え方は、以下のことを覚えておきましょう。

「税務署に出す情報は、多ければ多いほど税務調査に入られる(選定される)確率は上がる」

この原則的な考え方は、「お尋ね」等の資料せんも同じで、提出すればするほど税務調査の誘因になります。

申告内容のみならず、お尋ねなどの資料せんによって税務署は情報を強化し調査選定しているので、情報が多ければ多いほど税務調査には入られやすくなる、という論理です。

情報が急に少なくなると怪しまれる?

このような話を聞くと、例えば「勘定科目内訳明細書」などを今まで詳細に記載していた人は、「じゃあ次の申告からは粗く記載しよう!」と考えるかもしれません。

それと同時に、「でも急に変更すると、かえって税務調査に入られやすくなるのでは?」といった疑問が湧くかもしれませんね。

でも心配は無用です。安心してください。

内訳書の内容は税務署内でデータ入力されていないので、項目数が減ったなどがあったとしても、システム的には影響ありません。

また、調査官が申告書を見た際に、「内訳書の記載が粗くなったな!税務調査でお仕置きしてやる!」などと、イチイチ思いません。

あくまでも調査官は、内訳書などの情報が多いと税務調査がやりやすいと思っているのであって、期ごとに並べて内訳書を比べるわけではないのです。

税務署は「法人事業概況説明書」をどう捉えているか?

さて、それでは本題の「法人事業概況説明書」の記載内容について触れていきましょう。

法人事業概況説明書は、法人税法施行規則第35条に定める「添付書類」に含まれているため、提出義務があります。

提出しなくても税務署から電話がかかってくるぐらい(結局は提出することになろうかと思いますが)で、申告自体はされたものとみなされます。

また、平成30年4月1日以後終了の事業年度分から、事業概況説明書の様式が改訂され、項目がさらに細かくなりました。

「ここまで詳細に回答する意味はあるのかな?」と感じている人も多いかもしれませんね。

税務署が考えている事業概況説明書の役割は2つあります。

役割① 入力の省力化

本来であれば、決算書を手打ちでKSK(全国の税務署等のデータベース)に入力しなければなりませんが、事業概況説明書をOCRで取れば主要勘定科目はそのまま入力されます。

逆から考えると、事業概況説明書には「会計ソフト名」などの記載がありますが、システムへの入力はされていません。

つまり、記載しても「意味がない」ということです。

役割② 参考資料

税務署としては、決算書などの数値データをより細かく把握するか、もしくは数値外の情報を新たに把握することで、調査選定に生かしています。

事業概況説明書もその1つと言えます。

つまり、税務署側からすれば事業概況説明書はあくまでも参考資料であって、それだけで調査選定をするなどはありません。

本日のまとめ

いかがだったでしょうか?

「法人事業概況説明書」の記載については、埋められる項目だけは埋めておいて、あとの詳細などは躍起になって埋める必要もないでしょう。

税務署もそこまで内容を精査しておらず、記載項目数が少ないから調査選定するという基準・考え方もありません。

裏を返せば、事業概況説明書をすべてしっかり書けば調査選定されにくくなるわけでもありませんから、まさに「そこそこ」記載しておけば大丈夫なのです。

税務署に提出する書類には、その種類によって、力を入れるべきものと手を抜いてもよい(語弊があるかもしれませんが)ものとがあります。

これらを上手く使い分けることで、書類作成の手間が少しは省けるかもしれませんね。

この記事をシェアする