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家族信託なんか使わずに財産管理を委任したらダメなの?

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2022.08.31

お客様に家族信託の説明をしていると、「家族信託を使わずに財産管理を委任したらダメなの?」という質問を受けることがあります。

そこで本日は、財産管理委任契約と家族信託契約の違いについてお話ししたいと思います。

財産管理委任契約と家族信託契約は似ている!?

財産管理委任契約とは、他人に自分の財産の管理を委任することを言います。

この委任契約ですが、じつは割と身近なところにあります。

例えば、本人が忙しくて役所の窓口に行けないとき、その家族が委任状を持っていき、代わりに手続きを行うことってありますよね。

この委任行為も、財産管理委任契約の一種と言うことができます。

また、賃貸用不動産をお持ちであれば、ほとんどの人はその管理を管理会社に任せているのではないかと思います。
このような契約も、財産管理委任契約と呼べるでしょう。

つまり財産管理委任契約とは、財産の所有者本人が財産の管理が厳しくなった場合に、代理人が手続きを行う仕組みのことを言います。

一方の家族信託契約とは、財産の所有者本人の認知症に備えて、受託者である家族が財産の管理をできるようにしておく仕組みのことを言います。

この2つ、似ていることが分かりますよね。

財産管理委任契約と家族信託契約の違いとは?

財産管理委任契約と家族信託契約が似ていることは分かったのですが、やはり違う部分もあります。

これら2つの契約の違いは、大きく分けて以下の3つです。

①法律の違い
②代理人、受託者が行った行為の帰属先の違い
③当事者の権限の強さの違い

それでは、順番に見ていきましょう。

①法律の違い

財産管理委任契約は、民法の総則の「代理」「委任契約」に関する規定がベースとなります。

したがって、代理人の行った行為の結果から生じる効力や代理権の消滅等に関しては、基本的に民法の規定で定められます。

一方、家族信託契約は信託法をベースとしているため、受託者が行った行為の結果から生じる効力や信託がどのように終了するかの定め方については、委任契約と異なった手続きで進めていくこととなります。

規定する法律が違うだけなので、「だから何?」という感じかもしれませんね。

②代理人、受託者が行った行為の帰属先の違い

財産管理委任契約は、代理人が行った行為に関しては委任者本人に帰属します。

家族信託契約は受託者が行為を行う主体となり、受託者に帰属する形となります。

これだけだとイマイチ分かりづらいので、具体例を挙げましょう。

例えば、代理人または受託者が不動産を購入した場合の登記簿上の名義は、財産管理委任契約では依頼した人の名前、家族信託契約では受託者の名前が記載されます。

つまり、2つの契約で持ち主が変わるのです。

ただし家族信託契約の場合であっても、税務上は委託者が財産を有する者として課税関係が発生します。

③当事者の権限の強さの違い

「権限の強さの違い」と一口に言っても、じつは「法律的な違い」と「実務上の違い」があります。

それぞれについて見ていきましょう。


☆法律的な権限の強さの違い☆

委任契約の場合は、委任者と受任者の両方に権限があるのが一般的です。

例えば、委任者が代理人に対して不動産を売却する権限を与えたとしても、委任者も引き続き不動産の売却を行うことが可能です。

家族信託契約の場合は、信託財産の名義人となる受託者の方が、権限が強くなります。

例えば、委託者が受託者に不動産を信託すると、不動産の売却の権限を持つのは受託者のみとなります。

つまり、家族信託契約は委託者の権限を奪ってしまうという側面もあるのです。

したがって、委託者がまだ若く意思能力がしっかりある場合には、信託を行うか慎重に検討する必要があるでしょう。


☆実務的な権限の強さの違い☆

委任契約の場合は、不動産の売却や預金の払い出しを代理人が単独でできるケースは少ないです。

重要な財産に関する手続きは、委任者の意思を確認したうえで行うのが一般的だからです。

具体的な手続き方法としては、不動産の売却の場合、代理人の司法書士ではなく委任者に直接意思確認を取り、手続きを進めます。

預貯金の払い出しの場合、代理人が委任状を持って行ったとしても、銀行は委任者に電話をして意思確認を行うケースが多いです。

家族信託契約の場合は、受託者が財産の名義人となるため、不動産の売却や預金の払い出しは受託者が単独で行えます。

本日のまとめ

いかがだったでしょうか?

このように、権限の強さが家族信託を行うか否かを判断するポイントとなります。

アパートの賃貸や管理を行うだけであれば、サブリースや財産管理委任契約で対応ができるため、必ずしも家族信託を行う必要はありません。

一方、不動産の売却や不動産の建て替えが想定される場合には、委託者の意思能力がなくなってしまった後も手続きを進めることができるよう、家族信託を行っておくことが有効でしょう。

状況によって、財産管理委任契約と家族信託契約は使い分けをすることが大事ですね。

家族信託は、あくまでも財産管理を行う一つの選択肢に過ぎません。

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