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家族信託では子供にお金をいくら預けたらいいの?

ブログ

2022.04.15

普段、家族信託の活用についてのご相談をいただいていますが、家族信託の利用目的で最も多いのが、高齢者の認知症対策です。

皆様の周りにも、高齢になり認知症を患った後の財産管理について、不安を持たれている方は少なくないと思います。

では、その高齢者の財産管理について、まず考えなければならないことは何でしょうか?

それは、「どの財産について対策が必要か?」でしょう。

対策が必要な財産は「不動産」と「預貯金」

対策の必要性が最も高いのは、何といっても不動産です。

保有している不動産を売却・賃貸する場合には、本人の判断能力が必要となります。

もし何も対策をとっていないまま認知症を発症してしまうと、貴重な財産である不動産を上手く活用できなくなるリスクがあるのです。

次に検討しなければいけない財産は、預貯金です。

預貯金の対策が必要な理由には、大きく2つあります。

理由① 後見制度を使わないと預金が引き出せなくなる

銀行は、本人以外からの預金の引き出しには、原則として応じません。

これは、家族が本人の代わりに預金を引き出そうとする場合も同様です。

「銀行が家族からの預金の引き出しの申し出を一部認める」制度が創設される見込みである、というニュースも聞かれています。

ただし、仮にこの制度ができたとしても、家族が自由に本人の預金を引き出せるようにはなりません。

したがって、本人が預金の引き出しが出来なくなった時に備えて、予め家族信託などの対策を検討しておくべきなのです。

理由② 特殊詐欺(オレオレ詐欺)対策により高齢者の預金引き出しが制限されている

ほとんどの銀行では、警察からの指導により、高齢者が窓口で多額の現金を引き出す際には特殊詐欺(オレオレ詐欺)の被害にあっていないかを確認します。

場合によっては、警察官立会の下、預金の引き出しに応じる取扱いになっているようです。

高齢者がたとえ元気であったとしても、この取扱いは変わりません。

銀行は、顧客が詐欺被害にあわないようにこのような取扱いをしていますが、実際に皆さんやご家族が預金を下ろす際に警察官を呼ばれたら、不便さを感じるのではないでしょうか。

このような課題を解決するのが、家族信託という制度なのです。

家族信託を利用すれば、予め信頼できる家族に預貯金を託しておくことができるため、上記のような問題に遭遇することなく財産管理が可能となるのです。

信託する預貯金の額の決め方とは?

では、一体いくらの預貯金を託しておけば良いのでしょうか?

実際、ご相談をいただくお客様のほとんどからこの質問をいただきます。

「多めに信託しておいても問題ないのでは?」と考える方もいるでしょう。

もちろんそれでも良いのですが、家族信託の組成を専門家に依頼した場合、その報酬額は、信託財産の額に応じて増えていくのが一般的です。

つまり、信託する預貯金の額が増えれば増えるほど、専門家に支払う報酬額も増えることになります。

したがって、「いかに必要十分な金額の預貯金を信託できるか」ということが、コスト面では重要になってくるのです。

そこで、次のような基準を用いて、信託する預貯金の額を決めるとよいでしょう。

基準① 不動産を信託する場合は、固定資産税5年分を信託する

不動産を家族に信託した場合、翌年以降の固定資産税は、不動産を預かる側(財産管理を引き受ける息子等)が支払うことになるかと思います。

しかし、この固定資産税は本来、不動産を預ける側(財産管理を任せる高齢者等)が支払うべきものです。

したがって、不動産を預ける側から預かる側へ、固定資産税の納税資金(だいたい5年分くらい)も信託しておくとよいでしょう。

基準② 将来必要となる介護費用を計算して、その金額が支払えるくらいの金額を信託する

将来、どのような形で介護をするのか?

施設に入るとしたら、どのような施設に入るのか?

将来、受けたい介護のイメージがあったとすれば、その介護の実現にどの程度お金がかかるのか?

このようなものを、概算で構わないので計算してみましょう。

ご高齢の方が介護施設を利用する場合、入居時にはまとまったお金が必要であることが多いです。

例えば、とある世田谷区の介護付き有料老人ホームに入居する場合、入居時に一時金として1680万円、月々の支払いが約28万円の支払いが必要になります。

介護サービスについては介護保険が適用されますが、入居一時金には介護保険は適用されません。

このように、まとまったお金が必要となる可能性があるため、いざという時すぐに預金を下ろせないと、施設を利用できないなどの問題が発生するおそれがあります。

将来入居する予定の介護施設があるのであれば、その施設への入居一時金相当額は信託しておくと安心でしょう。

本日のまとめ

いかがだったでしょうか?

「預貯金はいつでも引き出して使える」と思っている方も多いかもしれません。

しかし、ひとたび認知症になってしまうと、たとえ自分のお金だったとしても簡単には引き出せなくなってしまうのです。

家族信託はこのような事態に備えるための対策ですが、信託する預貯金の額も慎重に検討しなければなりません。

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