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偽装請負に要注意!

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2022.07.01

本日は、実質的には雇用や派遣関係でありながら請負業務を装う、いわゆる「偽装請負」についてのお話です。

「偽装請負」に該当するかどうかが争われていた裁判において、2019年11月4日、大阪高裁で「雇用関係があった」とみなす判決が下されました。

2015年にスタートした「みなし雇用」の制度が初めて適用されたもので、今後は同様の裁判に影響を与える可能性があるでしょう。

「みなし雇用」制度は、偽装請負を防止して雇用の安定を図る目的で導入されたものです。

事業者が偽装請負状態で働かせていた場合には、実質的に労働者に対して雇用契約の申し込みがあったものとみなし、労働者が望めば原則として直接雇用されます。

「偽装請負」とは?

「派遣」と「請負」の違い

さて、そもそも「偽装請負」とはどういう状態を指すのでしょうか。

これを理解するためには、「派遣」と「請負」の違いについて整理しておく必要があります。

労働者と事業者、そしてそれを仲介する請負業者の三者がいるとします。

「派遣」では、請負業者と事業者の間で契約が結ばれ、労働者が派遣されることとなります。

指揮命令や労務管理は働き先、つまり派遣を受け入れた事業者が行う必要があります。

これに対し「請負」では、請負業者が労働者を差し向けるという点では変わりませんが、指揮命令や労務管理は請負業者が行います。

つまり労働者を受け入れた事業者には、労働者に対する指揮命令の権限がないということになります。

その代わり、労務管理を行う必要もありません。

偽装請負とは表面上は「請負」だが実態は「派遣」である状態

以上の知識を前提として、「偽装請負」について見ていきましょう。

「偽装請負」になると、請負契約を結びながら、実際には労働者を受け入れた事業者が権限がないにもかかわらず指揮命令を行います。

その反面、労務管理は行いません。

つまり偽装請負とは、「請負契約を装っているが実態として派遣関係である状態」を指します。

偽装請負が起こる背景とそのリスク

中小事業者が、従業員を「外注化」するなどの手法でコストカットを図るケースは珍しくありませんが、偽装請負と認定されると未払賃金や社会保険料、消費税の追徴課税まで支払わされることになります。

偽装請負のリスクについては、ぜひとも把握しておきたいものです。

そもそもなぜ偽装請負が起こるのか?

なぜ偽装請負が起きるのかというと、それは労働者を受け入れる事業者にとってメリットが多いからに他なりません。

具体的なメリットとしては、

・請負関係にすれば労働基準法が適用されない
・雇用関係がないため、雇用保険料や健康保険料などの負担がない
・残業代を支払う必要がない
・権限がないにもかかわらず指揮命令を行える

といったことが挙げられ、まさに派遣と請負の「いいとこ取り」が可能になるわけです。

これだけでもメリットは大きいのですが、さらに直接雇用関係を結ぶ場合に比べて、税金面でのメリットもあるのです。

従業員への給与には消費税がかからない一方で、外注費には消費税がかかります。

そのため、同じ業務を担当させて同じ報酬を負担するにしても、請負業務を装えば支払った消費税の分だけ消費税の還付額・相殺額を増やすことができます。

同じことは源泉所得税にも当てはまり、実質的には雇用関係であっても請負を装うことで税負担を大きく抑えることができるのです。

偽装請負と認定されてしまうことのリスクとは?

このように、事業者にとっての旨味があるため、偽装請負に手を染めるケースが後を絶ちません。

とはいうものの、イイコトばかりではありません。

偽装請負に手を出すと、手痛いしっぺ返しを受けかねない点を忘れてはいけないでしょう。

偽装請負と認定されると、労働者派遣法、職業安定法、労働基準法に触れ、それぞれ100万円以下の罰金や1年以下の懲役の対象となります。

偽装請負はれっきとした犯罪ということです。

さらに実質的な雇用関係があったと認定されれば、消費税や源泉所得税を故意に免れたとして国税当局の調査が入り、無申告加算税や重加算税を課されます。

また「第二の税金」である社会保険料についても責任を問われ、過去にさかのぼって納付を求められるでしょう。

あわせて、労働者から訴えられれば未払残業代などの支払義務も生じます。

そのため、偽装請負が発覚した際のダメージは社会的評価に傷が付くというレベルにとどまらず、金銭的負担だけでもかなりのものとなってしまうのです。

本日のまとめ

いかがだったでしょうか?

今回の大阪高裁の判決で「みなし雇用」が初めて認定されたことで、今後は同様の判断が全国で下される可能性もあります。

この判決によって、どれだけ長い期間続けてきた請負契約であっても、実は雇用関係だったとみなされる可能性が高まったということなのです。

故意の偽装請負に手を出さないのはもちろんのこと、正当な請負契約だと思っていた働かせ方が、実際には法律に抵触しているケースがないか、今一度確認するべきでしょう。

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