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事業が赤字でも専従者給与は支給できる?

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2023.02.13

青色申告の特典の1つに「青色事業専従者給与の特例」というものがあります。

これは、配偶者など生計を一にする家族に給与を支払った場合、原則的には必要経費として認められないのですが、特例として認めますよ、という制度です。

もちろん、いくらでも支給が認められるわけではありませんが。

税務調査において、専従者給与が高いという理由で否認指摘を受けることはあります。

では、専従者給与の額そのものは高くなかったとしても、事業が赤字の場合に専従者給与を支給してもよいのでしょうか? 本日は、そんなお話です。

専従者給与は経営状態とは無関係

税務調査において、赤字の事業者からの専従者給与に対し、その一部もしくは全部を認めないとする指摘を受けることは現実にあります。

結論から申し上げると、この指摘は間違いです。

専従者給与というのは、生計を一にする家族に対して支払われるものですが、その性質はあくまでも給与です。

つまり、労働の対価として支給されるものなのです。

専従者給与を支給し、その結果赤字になったとしても、労働の対価として適正な金額であれば、それは必要経費として認められます。

赤字の事業者が家族以外の従業員に給与を支給していたとして、それが必要経費にならないということはないですよね?

事業所得が赤字だからという理由で否認指摘されるのは、もはや意味不明です。

専従者給与の裁決事案

専従者給与が適正な金額であれば、事業の業績に関係なく必要経費として認められることは分かりました。

それでは次のような場合はどうでしょうか?

これは、平成27年に実際に裁決された事案です。

事案の概要

この事案は、複数の病院に勤務するとともに自ら診療所を営む医師が、妻に対して青色事業専従者給与を支払っていましたが、国税当局はそれを必要経費として認めなかったとして争われたものです。

これがなぜ認められなかったかというと、次のような事情があったからです。

〇勤務している病院からの給与収入が事業収入の4倍あった
〇事業所得が赤字であった
〇事業主借勘定に振り替えられた現金から専従者給与が支払われていた

国税当局の主張としては、

「要するに、病院からもらっていた給与から奥さんに専従者給与を支払って、必要経費にしてたんでしょ?そんなの認められないよ!」

というわけです。

裁決の結論

そもそも、青色事業専従者給与が必要経費として認められている根拠は、所得税法第57条にあります。

所得税法57条(事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等)
青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者と生計を一にする配偶者その他の親族~で専らその居住者の営む前条に規定する事業に従事するもの(以下この条において「青色事業専従者」という。)が当該事業から~給与の支払を受けた場合には、前条の規定にかかわらず~その労務の対価として相当であると認められるものは、その居住者のその給与の支給に係る年分の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入し~

この規定の中には、事業収入以外から事業に流入した資金により専従者給与が支払われた場合に、それを必要経費として認めないとする旨の記載はありません。

現に、この裁決では医師である納税者がおおむね勝っています。

一部認められなかったのは、類似同業者の専従者給与額の平均と比較して高いと判断された部分でした。

これは、専従者給与の必要経費性の話ではなく、金額の適正性の話です。

上記の否認指摘は、国税の拡大解釈と言わざるを得ないでしょう。

本日のまとめ

いかがだったでしょうか?

青色事業専従者給与というのは生計を一にする親族に対して支払われるので、国税当局としては「税逃れの温床」として目を光らせています。

しかし、本日紹介したような否認指摘を受けた場合にも、所得税法第57条の拡大解釈は認められないことをきちんと主張すべきです。

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