不動産管理は個人よりも法人で!?
一般の事業において、ある程度の所得規模の個人事業者であれば、法人化することで節税メリットを受けられることは、よく知られた事実かと思います。
不動産経営をしている方も同様に、法人化することでさまざまなメリットを受けることができます。
本日は、「不動産管理会社」を設立することのメリットについてお話ししたいと思います。
「不動産管理会社」を設立するメリットとは?
不動産管理会社を設立するメリットは、端的に言うと、オーナー個人の所得を法人へ移すことで、「所得の分散を図れる」ことです。
一定規模の不動産を個人で所有・管理している不動産オーナーが「不動産管理会社」を設立すると、税金面などで有利になることがあります。
所得税は超過累進税率といって、高所得であればあるほど税率が高くなり、負担が重くなります。
したがって、1人ですべてを持つよりも、他者と分散して所有することで、資産全体でみると有利に働くことがあるのです。
例えば、1人で1,000万円の所得がある世帯よりも、2人で500万円ずつの所得がある世帯の方が、世帯全体の税金は少なくなります。
また、不動産収入を個人で抱え込んでいれば、相続財産は年々増加して肥大化してしまい、相続時に多額の税金を納めなくてはならなくなります。
そこで、財産のうち不動産を法人に集約させて、所有物件が生み出す所得を分離します。
個人としての金融財産の増加を抑制することで、将来の相続税対策にもなる点が大きなメリットです。
また、法人の役員にした親族に報酬を支払えば、所得を親族に振り分けることもできます。
いわば生前贈与と同様の形で、不動産収入を親族に分け与えられる効果が期待できるのです。
この仕組みでは、親族に所得税等が課せられても、贈与税はかかりません。
このほか、法人や親族が不動産所得をプールしておくことで、相続税の納税資金準備になるという側面も見逃せません。
不動産管理会社の3形態
このように、法人の設立で所得税・住民税の軽減や相続財産増加の防止、納税資金準備などの効果が見込まれるわけです。
さまざまなメリットがある不動産管理会社ですが、その形態は大きく3つに分かれます。
①委託型不動産管理法人
最も手軽に導入できるのが「委託型不動産管理法人」といわれる仕組みです。
不動産オーナーは、「不動産の所有者」「賃貸借契約の契約主体」という立場を保ったまま、不動産管理法人と管理委託契約を結びます。
つまり、不動産の所有者は個人のままなので、不動産収入そのものは個人に帰属します。
一方、法人は不動産の管理のみを担当し、法人の収入は資産家オーナーからの管理委託料、つまり管理料となります。
「これって何の意味があるの?」と疑問に思う人もいるかもしれませんが、個人は法人に管理を委託して管理料を払うことで、その経費の分、所得を減らすことができるのです。
もちろん、法人には管理料収入が入りますけどね。
②サブリース型不動産管理法人
2つ目の形態は、「サブリース型不動産管理法人」です。
この場合、不動産オーナーは法人と建物一括賃貸借契約を締結します。
法人は物件オーナー個人から一括借り上げした不動産を転貸する形で、入居者と賃貸借契約を結びます。
家賃収入から不動産オーナーに支払う借り上げ家賃を引いたものが、法人の実質管理料となります。
こうした仕組みから「一括借上方式」や「転貸方式」と呼ばれることも多いです。
③不動産保有法人
3つ目の形態は、「不動産保有法人」です。
最も所得の分散効果が大きく、節税効果の大きさから「不動産管理会社が最終的に目指す形態」とも言われます。
この不動産保有法人は、不動産オーナーから「建物」を購入して所有します。
不動産を所有していた個人には「土地」に関する地代収入が残るだけで、家賃収入のすべてが法人に置き換えられることから、所得の大部分を法人に移すことができます。
それぞれの「不動産管理会社」における注意点
このように、3つの形態に分かれる不動産管理会社ですが、それぞれの特徴を見極めて、自分たちに合った法人を設立することが重要です。
また、それぞれの法人にどれだけ所得を移すのかについては、慎重な検討が必要でしょう。
不動産保有法人であれば、個人に納める地代の額は、一般的に固定資産税などから計算されます。
そのため、地代を設定する場合は一定の基準が見えてきます。
一方で、委託型不動産管理法人やサブリース型不動産管理法人の収入(管理料)は、周辺物件などの「相場」が適正額の目安となります。
所得分散だけを重視するなら、管理料・実質管理料を高額に設定して、できるだけ多くの所得を法人に集約させた方が良さそうですよね。
そのうえで、役員報酬として家族へ所得を分散させるのが理想といえるでしょう。
しかし、管理料や給料が適切でなければ、意図的な税逃れとして税務署から指摘を受けてしまいます。
あまりにも実態とかけ離れた金額設定での税務処理は、避けなければなりません。
管理料を設定する際の目安となる一般的な「数字」は、委託型不動産管理法人の場合で、賃料の「7%前後」だとされています。
一方、サブリース型不動産管理法人の場合、転貸できずに空室が発生するなどのリスクを負うため、委託型不動産管理法人と比べて管理料が高くなります。
このケースでは10~20%の設定をする不動産オーナーが多いようです。
ただし、あくまでも実態に沿った処理をすることが重要です。
役員報酬はその業務内容にあったものであることが求められます。
本日のまとめ
いかがだったでしょうか?
収益不動産を所有している場合、個人でそのまま所有するよりも、法人をかませた方が節税になることが多いです。
ただし法人を設立する場合、不動産管理会社の形態選択や管理料設定、法人税の処理方法など、事前に検討しなければならない点は数多いです。
ネットや経営者仲間の言葉を鵜呑みにすると、税務署から思わぬ指摘を受ける危険もあるので、注意しましょう。