「相続登記義務化」ってなに!?
来年の2024年4月より、相続登記の義務化がスタートします。
「相続登記義務化って何ですの!?」と思われた人も多いかもしれません。
それもそのはず、法務省の調査によると、6割を超える人々が相続登記の義務化を知らないことが分かりました。
本日は、そんな「相続登記義務化」の基本からお話ししたいと思います。
「相続登記義務化」とは?
相続登記とは、相続により不動産を取得した場合に不動産名義を相続人に変更することです。
これまでは、相続で譲り受けた不動産を登記するかどうかは任意であったため、登記はそれぞれの相続人の判断に委ねられていました。
そのため、相続人が固定資産税などの税負担を避けたり、土地管理の煩わしさから放置したりするケースが多く見られました。
国の調査によると、国が保管する全ての登記簿のうち2割が所有者不明土地であることが明らかになっています。
所有者が不明である土地のうち3分の1は転居先などの住所変更が届けられていないことが原因で、3分の2はすでに亡くなった人の名義になっていました。
相続登記が行われなければ、当然ながら登記簿上の名義は死亡者(被相続人)となるので、そのまま放置され続けて世代交代が進めば、法定相続人はねずみ算式に増えてしまうでしょう。
こうした状況を受け、国は2020年に土地基本法を本格改正し、土地所有者の責務を明確化しました。
その総仕上げとして民法や不動産登記法の改正が行われ、今回の「相続登記義務化」に至るわけです。
「相続登記義務化」とは、相続による取得を知ってから3年以内の登記申請を義務付け、正当な理由なく怠った場合には10万円以下の過料が科されるというものです。
義務化への対策を怠れば、子や孫が相続する際の負担が増すことになりかねません。
ところが法務省が発表した調査結果によりますと、相続した不動産の登記が2024年4月からは法律上の義務となることを、6割を超える人が知らないようです。
相続登記の義務化について、「全く知らない」と答えた人は43.1%に上り、「聞いたことはあるがよく知らない」の23.3%と合わせると、66%の人が義務化を知りませんでした。
来年4月からスタートされることを考えると、3人に2人が知らないという結果は、とてつもなく大きい数字と言わざるを得ないでしょう。
相続登記をしないデメリット
正当な理由なく相続登記をしなければ、10万円以下の過料が科されてしまうというデメリットはありますが、デメリットはそれだけではありません。
デメリット① 不動産の売却や担保設定ができない
相続登記をしないままにしておくと、不動産の売却や担保設定ができません。
つまり、被相続人名義のままで不動産を売ったり、担保として設定したりすることができません。
仮に、買い手が現れて相続人と買い手との間で不動産の売買契約まで取り交わしたとしても、被相続人から買い手に直接所有権の移転登記をすることができません。
そのため売買を完了させるには、被相続人から相続人に所有権を移しておく必要があります。
当然、引き継いだ不動産を担保にして金融機関から融資を受けるときも、資産の登記は不可欠です。
デメリット② 権利関係が複雑になる
登記を放置したままですと、権利関係が複雑化することも問題点として挙げられます。
相続開始から長期間経過することで、さらなる相続が発生していくことになります。
当事者が所在不明の場合、すぐに登記を含めた相続の手続きをすることができず、相続分を確定することが困難となってしまいます。
相続が2回以上重なると、誰が相続人となるのか、その調査だけで相当の時間がかかり、相続登記の手続費用や手数料も高額になります。
相続の手続に時間がかかれば、相続した不動産を売りたいと思ってもすぐに売ることができず、結果として不利益を招く事態となるでしょう。
子や孫に想定外の負担が生じることも否定できません。
デメリット③ 不動産を差し押さえられる可能性がある
相続人に借金のある人がいると、不動産が差し押さえられてしまう可能性もあります。
相続人にお金を貸している債権者は、債権を守るために相続人に代わって「代位登記」を行うことによって、不動産を差し押さえることができるためです。
不動産登記は、第三者に権利関係を証明するための唯一の手段です。
万が一、土地に無断占有者が現れた場合には、その退去を求めるにあたって登記名義人が被相続人のままでは、権利関係の証明が不可能となります。
退去要求せずに手をこまねいていれば、無断占有者が「時効取得」を理由に登記申請してしまうという恐れもあるでしょう。
デメリット④ 相続人が認知症を発症するリスクがある
登記を放置することで相続人が高齢化していけば、認知症発症のリスクが高まる点も考慮に入れる必要があります。
相続人の判断能力がなくなれば、成年後見人をつけないと遺産分割協議に参加することができなくなります。
判断能力のない人が成年後見人をつけずに遺産分割協議に参加したとしても、その遺産分割協議書は無効となってしまいます。
デメリット⑤ 不動産の修繕ができない可能性がある
登記上の所有者が死亡しているにもかかわらず登記変更していないと、建物の修繕業者との取引が難しくなる可能性もあります。
長年メンテナンスされていない不動産は荒廃し、倒壊したり植木の枝葉が散乱したりするなど、近隣に損害を与えかねません。
最悪の場合には、近隣住民と自治体によって相続人の捜索が行われ、やがて居所が突き止められると、原状回復要求や損害賠償請求をされてしまうリスクもあります。
相続登記が複雑化しないための事前準備
いざ相続登記をしようと思っても、手続きが煩雑で労力もお金も必要なケースがあります。
そこで、複雑な相続登記にならないための事前準備をしておくことも大切です。
まずは保有する不動産を洗い出し、法務局で登記簿謄本をとって名義や住所をチェックすることから始めましょう。
登記簿上の住所が現住所と違う場合には、住所変更登記をしておく必要があります。
また、遺言書などの必要書類も重要です。
遺産分割協議書を作成することになってしまうと、不動産をどうやって分けるかを記載し、相続人全員に実印を押してもらい、全員分の印鑑登録証明書も必要になります。
亡くなった人の戸籍謄本、住民票の除票、固定資産評価証明書などを用意し、「登記申請書」を書くことになります。
相続人の誰か一人が代表して相続人全員共有の法定相続登記をすることもできますが、代表者はほかの相続人の分の登記費用を負担しなければなりません。
また、遺産分割協議が成立した際には修正も必要となり、労力もお金も余計にかかってしまいます。
本日のまとめ
いかがだったでしょうか?
相続登記義務化まで、残り1年となりました。
義務化への対策を怠れば、子や孫が相続する際のコスト負担が増すだけではなく、さまざまな困難が待ち受ける可能性があることも、頭に入れておく必要があります。
まずは保有する不動産の権利関係がどのようになっているのか、現状把握をすることから始めてみましょう。